今月(2020年07月)のトピックス&お役立ちリンク先
今月のトピックス
[1]雇用調整助成金の特例措置の拡充
助成額の上限が8,330円から15,000円に引き上げられるなど、さらなる拡充が行われました。
■参考リンク:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例) 」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
[2]小学校休業等対応助成金の対象期間延長
助成額の上限が8,330円から15,000円に引き上げられ、また対象期間が9月30日まで延長されました。
■参考リンク:厚生労働省 「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html
旬の話題
今後、人事労務管理に関連する法改正の施行が多く予定されています。そこで今回の特集では、今後施行される法改正の概要を確認しておきましょう。
【1】今後施行される予定の法改正
現時点で今後施行が予定される法改正で主なものは、下表のとおりです。企業規模によって、施行時期が異なるものも多く、また、就業規則の変更や、役所への届出が必要なものもあります。もれなく対応を進めていきましょう。
【2】押さえておきたい法改正の内容
[1]でとり上げた内容について、具体的なポイントを確認していきます。
1. パワーハラスメント防止措置の義務化
パワーハラスメントの問題の増加から、その防止措置の実施が義務化されます。具体的には、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置と同様に、パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にし、管理職を含む従業員に周知・啓発をすること、パワーハラスメントの言動を行った従業員に対して厳正に対処する旨の方針やその内容を就業規則等に規定すること等が義務となります。大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から義務化されます(中小企業は、2022年3月31日までは努力義務)。
2. 女性活躍推進法
公表項目の追加(常用雇用労働者数301人以上の事業主)
常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、2020年6月1日以降、女性の活躍に関する情報公表について、2つの区分(「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」)から、それぞれ1項目以上選択して2項目以上情報公表する必要があります。
3. 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得
現行の子の看護休暇と介護休暇は、1日単位だけでなく半日単位(1日の所定労働時間が4時間以下の従業員は除く)での取得ができるようになっています。これが、2021年1月よりすべての従業員(※)について、時間単位での取得が求められるようになります。この時間単位での取得は、始業時刻または終業時刻と連続して取得できるものとすることが原則とされており、労働時間の間で休暇を取得するいわゆる「中抜け」を認める必要はありません。ただし、この中抜けを、法令を上回る制度として認めることは可能です。
※時間単位で取得することが困難な業務がある場合は、労使協定を締結することにより、対象者からその業務に就く人を除外することが可能です。
4. 同一労働同一賃金の施行(中小企業)
大企業については2020年4月1日にパートタイム・有期雇用労働法が施行され、同一労働同一賃金が施行されましたが、中小企業は1年遅れの2021年4月より施行されます。同一労働同一賃金と表現されますが、現実には企業内の正規従業員と非正規従業員の間の均等・均衡処遇を目指すことが本旨であり、その対応実務としては、正規従業員と非正規従業員の現状の待遇を比較し、不合理な待遇差がある場合には、その解消が求められます。
5. 70歳までの就業機会確保の努力義務化
働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備することを目的として、2021年4月より、企業に対して70歳までの就業機会を確保することが努力義務とされます。この就業機会の確保措置の選択肢としては、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(業務委託契約、社会貢献事業への参加など)などが挙げられています。
6. 中途採用比率の公表義務化(常用雇用労働者数301人以上の事業主)
常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、2021年4月より、従業員に占める中途採用により雇い入れた人の割合を定期的に公表する必要があります。この中途採用比率を公開することで、職場情報を見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングの促進していくことが狙いとしてあります。
7. 65歳以上複数就業者の雇用保険加入ルール
雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上であることが加入要件の一つになっていますが、複数の就業先で勤務する65歳以上の労働者について、いずれの就業先でも雇用保険の加入要件を満たさないような労働時間数での勤務であっても、2つの就業先での週の所定労働時間の合計が20時間以上であれば雇用保険に加入できるようになります。
8. 女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定(常用雇用労働者数101人以上の企業)
2022年4月1日より、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主に拡大されます。この拡大により新たに対象となる事業主は施行日までに、行動計画の策定・届出、情報公表のための準備を行う必要があります。
9. 月60時間超の割増賃金率50%の適用(中小企業)
大企業はすでに1ヶ月に60時間を超える時間外労働について、割増賃金率が50%となっています。中小企業はその適用が猶予されていましたが、2023年4月より適用となります。就業規則(賃金規程)の変更や、勤怠管理システムの時間外労働時間の集計方法の変更、給与計算ソフトの設定変更等、大掛かりな変更が必要になる場合があります。
10. 高年齢雇用継続給付の給付率 上限の引き下げ
高年齢雇用継続給付とは、従業員が60歳に達したときと比較して、それ以降の給与が一定額以上引き下がった場合に、従業員に支給される給付金であり、高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的としてきました。
しかし、社会情勢の変化により、原則65歳までの雇用の義務化が浸透し、更には70歳までの就業機会の確保が努力義務として求められるようになったこともあり、高年齢雇用継続給付の役割は薄れてきました。そこで、2025年4月より給付率の上限が15%から10%に引き下げられます。
11. 複数就業者にかかる労災認定・給付ルールの見直し
国は兼業・副業を促進していますが、その一方で、複数の勤務先で勤務する人のセーフティーネットの整備が求められていました。施行日は未定ですが、複数の勤務先から支払われた賃金に基づいて、労災の給付基礎日額の算定を行ったり、給付の対象範囲の拡充なども行われるようになります。
上記でとり上げた内容の一部は、今後、詳細な情報が出てくる予定です。また、これ以外にも法改正が行われる可能性もあります。すでに分かっているものは、対応内容な対応スケジュールを立てて着実に進めるようにしましょう。
■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
厚生労働省「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70際までの就業機会確保~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。