今月(2020年04月)のトピックス&お役立ちリンク先

今月のトピックス

[1]同一労働同一賃金の施行
同じ職場で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差を解消する、同一労働同一賃金の法制度が2020年4月から施行されます。この4月から適用になるのは、大企業と派遣労働者についてで、中小企業への適用は2021年4月からとなります。
■参考リンク:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

[2]時間外労働の上限規制(中小企業にも適用)
大企業で2019年4月から適用されていた時間外労働の上限規制が、2020年4月からは中小企業にも適用されます。これにより時間外労働に罰則付きの上限時間が設けられ、労働基準監督署に提出する36協定の様式も変更になります。
■参考リンク:厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html

[3]雇用保険料率・社会保険料率の変更
(1)雇用保険料率
2020年度の雇用保険料率は、2019年度から変更ありません。なお、2020年3月末で高年齢労働者の保険料免除措置が終了したため、2020年4月1日からは雇用保険に加入しているすべての被保険者から雇用保険料を控除する必要があります。

■参考リンク:厚生労働省「雇用保険料率について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html
(2)健康保険料率および介護保険料率
2020年度の協会けんぽの健康保険料率及び介護保険料率は、3月分(4月納付分)からの適用となります。

■参考リンク:全国健康保険協会「令和2年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/r2/20207/

[4]被扶養者における国内居住要件の追加
2020年4月以降、健康保険の被扶養者および国民年金第3号被保険者の認定において、国内居住要件が追加されます。これにより、一部の例外を除き、海外で居住している家族を扶養に入れることができなくなります。

■参考リンク:日本年金機構「【事業主の皆様へ】被扶養者における国内居住要件の追加について」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200121.html

[5]社会保険・労働保険手続きの電子申請義務化
資本金1億円超などの要件を満たす特定法人は、2020年4月以降に開始される事業年度から、社会保険・労働保険に関する一部の手続きを電子申請で行うことが義務付けられます。
■参考リンク:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/000511981.pdf

[6]健康増進法の施行(受動喫煙対策)
2020年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、事業者に対して、望まない受動喫煙を防止するための対策が義務付けられます。これにより、20歳未満の従業員を喫煙可能場所に立ち入れないようにしたり、求人の際に受動喫煙対策の取り組み内容を明示したりすることが求められます。

■参考リンク:厚生労働省「受動喫煙対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html

旬の話題

【年次有給休暇にまつわるよくある間違い】

年次有給休暇(以下、「年休」という)は昨年4月の取得義務化の影響もあり、運用上、疑問が多くなるテーマです。そこで今回の特集では、年休にまつわる間違いやすい点について確認しておきましょう。

労働基準法により年休は、勤続年数と出勤率(出勤した日数を全労働日で除した率)でその付与日数が決まります。具体的には、雇入れの日から6ヶ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上を出勤した場合(以下、「8割要件」という)に初めて付与され、その後1年を経過し、8割要件を満たした場合に下表に基づいて次年度以降の年休が付与されます。

この付与日数について、例えば2年6ヶ月を経過した際に出勤日数が少なく、8割要件を満たさなかった場合、表の2年6ヶ月が該当する「12日」の付与をしないことになりますが、次年度の3年6ヶ月を経過した際に8割要件を満たした場合、付与する日数は、表の3年6ヶ月が該当する「14日」となります。この点に関し、2年6ヶ月を経過した際に年休の付与をしなかったため、次年度の3年6ヶ月を経過した際には「12日」を付与すると勘違いしているケースが見受けられます。
付与する日数を判断する継続勤務年数とは、雇入れ時からの勤務年数を指し、付与したか否かは関係ありません。


年休付与基準である8割要件を満たすかを計算する際、次の期間は出勤したものとして取り扱われます。
• 労働災害による休業期間
• 育児休業および介護休業を取得した期間
• 産前産後休業を取得した期間
• 年休を取得した期間
例えば、産前産後休業および育児休業を取得していたことで、年休の出勤率を算定する期間の全労働日を出勤していなくても、出勤率は10割となり年休が付与されます。
なお、売上の減少等による生産調整のために、会社都合で休業をしたときのような、労働者の責によらない休業日は、出勤率の計算において全労働日に含めないこととなっています。

パートタイマーから正社員、または正社員からパートタイマーなど、雇用区分が変更されることがありますが、変更により所定労働日数が変更となっても、すでに付与された年休の日数はそのままとなります。ただし、年休を取得した時に支払われる賃金は、取得時における賃金額で判断されます。
この年休を取得した日の賃金は、就業規則(就業規則に準ずるものを含む)に定めることにより、以下のいずれかの方法で支払うことになっています。
1. 平均賃金
2. 通常の賃金(所定労働時間労働した場合に支払われる賃金)
3. 健康保険法に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する額(労使協定の締結が必要)
正社員とパートタイマーでこれらの方法を分けていることもありますので、年休を取得したときの賃金額の計算を誤らないようにしましょう。

年休を取得したことを理由に、賃金の減額やその他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。この不利益な取扱いとは、通達(昭和63年1月1日 基発第1号)で「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められる年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること」と示されています。
年休を取得したことを理由に精皆勤手当を支給しなかったり、減額したりするケースも見受けられますが、これは不利益な取扱いに該当します。また、出勤率に基づき賞与額を決定する際に、年休を取得した日を欠勤として取扱うことも、不利益な取扱いとなります。

2019年4月より、年10日以上の年休が付与される従業員に対して、少なくとも5日を取得させなければならないというルールが施行され、これで1年を迎えます。多くの従業員が年休を取得する中で、誤った取扱いなどがないようにしましょう。
■参考リンク
東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 有給休暇編」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501862.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。